
社外取締役を採用して、取締役会を機能化させる目的として、以下のものがあります。
1.客観的な視点から経営の視野を広げる
ファミリー役員と生え抜き役員だけでは視野が狭くなりがちです。社外取締役に最も期待されるのは社内にないものの見方や考え方を会社に持ち込むことです。
2.会社の方向性や意思決定を明確に示す
客観的な立場から、経営陣に対してあいまいになりがちな戦略や意思決定を明確にすることを求めます。
3.長期的コミットメントと短期的成果のバランスをとる
業績を評価して、もし目標に達しないならば、障害を発見し、それを克服する方法を提示することにも社外取締役の役割が期待されます。特にファミリービジネスにおいては長期的なコミットメントが短期的な成果よりも優先されすぎ、短期的な非効率を放置する傾向があります。長期、短期のバランスをとり、ファミリーが長期的コミットメントに暴走することを防ぎます。
4.経営陣に助言を行う
特に社長に対しては、社内からの助言が求めにくいため、社外取締役の助言は有効です。
5.事業承継の計画を確認し、進行を支援する
後継者の選定に対する助言、後継者の指導にも社外取締役は客観的な立場から支援することができます。また、特に創業社長から二代目社長への移行の場合、二代目社長には創業者以上に複雑な組織運営が課されることになります。社外取締役は、後継者の経営の大きな支えになることでしょう。また、後継者がリーダーとして経験を充分に積んでいるにも関わらず、高齢になった社長が居座り、引退時期を明確にしていない場合には、引退を諫言することも社外取締役に期待される役割です。
6.なれあいを回避する
時として、ファミリービジネスにおいては、ファミリーメンバー間の過度の信頼によって、相互にチェックすべき問題が放任されることがあります。兄弟の信頼関係が高いために社長である兄が弟の財務部長のチェックを行わず、粉飾決算に気づかなかった林原に起きた問題は、ファミリービジネスに起こりがちなことです。このようなファミリー関係から起きるなれあいを排し、社長と財務部長というビジネスの関係を喚起させるような、外部の客観的な立場からの助言が求められます。
7.ファミリー株主を支援する
ファミリーミーティングで定める株式売買規程やファミリー就業規程などにアドバイスすることで客観的な見識をファミリーにフィードバックし、支援します。
社長にとってはチャレンジ
社長にとって、自分の考えに異を唱える人を取締役会に加えることは、勇気と寛大さが必要になるものです。社長は自分が利きたくない話を聞くことになるからです。したがって、社外取締役を選ぶ場合には、意見を聞くに値する見識と経験を持った人に依頼することがポイントになります。例えば、尊敬する他のファミリービジネスの会長職の方や、長年ファミリービジネスの取締役を務めてきた方など、ファミリービジネスを理解した人が適任です。
最も避けるべきこと
また、社外取締役に何を期待するのかを明確にすることが大切です。事業の発展段階や経営状態によって依頼すべき人物の知識、経験も変わります。成長期においては事業立ち上げ経験の豊かな人物、安定、組織化の段階では組織づくりに実績のある人など、会社の状況によって求める人材も変わります。最も避けたいのは、単に業界で名が知られている、大企業で役員を務めた経験のあること、あるいは、社長の同級生であることなどの理由だけで社外取締役を依頼することです。
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