現社長が引退を決意しない理由と対策②:引退後の生活の不安、ファミリーの将来への不安、個人的内面の不安

引退後の生活の不安

漠然とした不安を持つより、具体的な計画を立てることです。引退後にやりたい、会社以外の生活を計画し、その準備を始めます。これも準備が早いほど選択肢は広がります。引退後の生活に夢が持てなければ、なかなか引退を決意できるものではありません。趣味に打ち込む、地域の活動に専念する、コンサルタントとして業界に貢献する、後進を育成する、本を書くなど、今までできなかったことに挑戦するチャンスとしてとらえることです。会社の資金を当てにし過ぎると、後継社長が率いる会社の積極性を奪うことになるので配慮が必要です。

ファミリーの将来に関する不安

自分が実権を握っていないと、ファミリーはバラバラになってしまうのでは?という不安です。この背景には、子供たちには失敗させたくない、守ってやりたいという親心があります。しかし、従業員に対するのと同じように、子供たちを自立した大人として扱いたいものです。「かわいい子には旅をさせよ」の精神です。ある社長は、「息子は細かいことでも逐一俺に相談に来る。俺がいなかったらどうなるのだ?」と言います。息子さんに聞いてみると、「社長に根回ししておかないと、後で2時間は小言を聞くことになる。最近社長は話が長く、くどい」とのこと。私の父も、社長交代を決意するまでにずいぶん時間がかかりました。それまでにメインの銀行や主力の仕入れ先から、そろそろ社長交代を、という声が何度となく聞こえてきました。父もそのことはわかっていたはずです。後から母に聞いたところ、父は「こんな赤字続きの状態では、息子には渡せない」と言っていたそうです。父は親心から世代交代を先延ばしにしていたのです。

個人の内面的な不安

長年社長を務めた人にとって、自分と会社を切り離して考えることは大きな試練です。自分がいない会社を想像できないのと同じように、会社のない自分を想像するのは難しいものです。事業承継を考えるということは、会社を除いた自分は何者かを探究する旅でもあるのです。それまで封印してきた自分の内面の感情と向き合うことにもなります。現社長がこの試練を乗り越えたときに、次の世代は責任を自覚し、新しい時代を創りはじめるのです。

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