後継者が準備期間に学ぶべきことは?

「能力開発計画がいかに苦しいプロセスであるにせよ、後継者自身が、自分の能力開発に絶対的な責任を持つべきことを明確に理解しなければいけない」と、ファミリービジネス研究の権威、ジョン・ウォード氏は言っています。父親の会社だからやっていけるというような意識では、充分な能力は身につきません。他社であっても、経営者として通用するだけの能力を身につける必要があるのです。

リーダーシップの基礎を身につける

後継者がビジネスの基本を学ぶ絶好の時期は、入社してから35歳くらいまでの期間です。これはリーダーになるための基礎トレーニング期間と言えます。筆者の場合、他社での勤務経験の後、ビジネススクール卒業後に父の会社に入り、配送センターやいくつかの販売チャンネルの営業担当、経理や情報システム部などを経験しました。

しかし、直属の部下を採用する体験や、売り上げ予算を持ったチームのリーダーの体験が少なく、取締役に就任した後で経験不足が身にしみることが多々ありました。特に仕入れ担当の経験がなかったため、取締役として仕入れを担当したときには、部署のとりまとめに苦労することになりました。担当を経験していないという意識が自信のなさにつながり、それがリーダーとしての信頼を得る妨げになっていたのだと思います。

ビジネススクールで得た知識や、現場で学んだスキルは重要なものですが、それだけではリーダーにふさわしい能力とは言えません。役職が持つ権限だけでは、チームや部下が本気で仕事に取り組ように「操作」することはできません。仕事の仲間の一人ひとりと人間同士の関係を築くこと、互いに尊重しあい、心が通じあうような、高い次元の絆で結ばれたチームを作ること。この能力、経験を磨き続けることができれば、後継者は自然にリーダーとして周りの信頼を得て、社長としてリーダーシップを発揮することを期待される存在になっていきます。

息子のこのような姿を見れば、自身の引退を先延ばしにしている現社長も、引退を考える安心材料のひとつになるのだと思います。

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