「人望」と「人気」を混同しない

後継者が準備段階を経て社長に就任すると、一か月以内に今まで想像していなかったような内面的な変化が起きます。

特に組織が大きいほど、この変化は大きいようです。私自身、二十数年前に社長就任した時、このような内面の変化に気づきました。そして、コンサルタントとして社長交代に関わったクライアントさんたちにも、同じような変化が起きるのを見てきました。

ある就任社長は、今までオヤジの姿を見て「ああはなるまい」と思っていたその姿が、自分の中に生まれ始めていることに気づき、愕然としたと語りました。新社長は、自分の中に起きる変化を認識し、消化しなければなりません。

社長交代と同時に、社員、得意先、仕入先、金融機関、業界団体などの人々が、今までとは違う接し方をしてきます。今まで本音で話してくれた人が、建て前中心の会話に変わるようなことが起きます。その結果、次のようなことが起きます。

●新社長は自分の言葉の重さに気づき、不用意な発言をしないように慎重になる

●会社に対する耳の痛い話を聞く時に、今まで以上に抵抗感が起きる

●社員に親しく接すると社長の威厳を損なうのではないかと不安になる

これを放置しておくと「人望」と「人気」を混同し、人気とりに走りたくなり、苦言を呈する社員を遠ざけ、イエスマンばかりの話を聞くようにもなりかねません。人気はいたずらに気持ちよくさせながら、事実や物事の本質から遠ざかってしまうものなので、冷静になる必要があります。一方、人望は、時間をかけ、本人の成長・成熟と信用を得た結果です。

後継者時代から社長に就任することは、新たなステージにステップを進めることです。そこでは今まで以上の修練が必要になります。常に自分に起きている変化に気づき、あるべき自分の姿を考え、自分を成長させる「内省」のプロセスを踏むことです。これは自分ひとりでは難しいもので、時には心理的に痛みの伴うプロセスになることもあります。そのためにも、社長就任前後のトレーニングの時期にメンターやコーチを持つことをお勧めします。

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