現社長と次期社長の決意

ある企業の現社長が世代交代の時期や次期社長を明確に発表したお陰で、次世代チームが、今まで越えられなかった壁を一気に飛び越えて、チーム一丸となって新たな高みに立ったように見えました。

現社長の引退の時期表明と後継者指名を受けて、次期経営チームは来年度の経営計画の策定をはじめました。年度計画の策定は今までも行ってきたのですが、今までは毎年のように社長に一蹴され、社長が示す目標の数字をもとに作り直しを行っていました。

今回はいよいよ世代交代の秒読み段階に入ったと、次期経営チームのメンバーは今まで以上に議論しました。この議論の中で、次期社長候補者と他のメンバーとの間に大きな意見の違いが生まれました。次期社長候補者は、来期に思い切った投資を行うことを提案し、他のメンバーは、それに大反対したのです。

社長候補者:5年先にわが社を見たときに、来期のこの投資は絶対に必要なものだ。

他のメンバー:会社をあげて経費削減に躍起になっているこの時期に、そのような投資 を行うことを若い社員にどう説明すればよいのか?

一般的に社長は中長期的な視野を持ち、マネジメントチームは短期的な視野を持つ、このギャップが次期経営チームのなかでも顕在化してきました。一時はこの投資の計画をあきらめかけた社長候補者でしたが「メンバーの意見はしっかりと聞かねばならない。しかし、意思決定は多数決で行うものではない。必要なのは、リーダーのコミットメントとメンバーを意欲的にするコミュニケーションだ」というアドバイスに、社長候補者は、あの手この手でメンバーを説得し、思い切った投資を盛り込んだ来期の計画をつくり、現社長に提案しました。

今までならばここで現社長に一蹴され、現社長の言う通りの計画に書き直すのですが、今回は違いました。現社長は提案をそのままOKしたのです。このことからも、3年後の交代に向けた現社長の決意がうかがわれます。

社長候補者いわく「今までは社長に一蹴されて腹が立つ一方で、実は自分はホッとしていたのだということに気づきました。なんだかんだ言いながらも、社長に守られていたのだと思います。けれども、今回はそうはいかない。非常に重いものを背負った感じがしています。社長が引退するということは、こういうことだったのかと、ひしひし感じています。」

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