ひとりに「株を集中させる」ことのデメリット 

前回、「株は分散させるな」はリスク回避という意味でメリットがある方針だということをお伝えしました。今回は、デメリットについて触れたいと思います。

まず、後継者ひとりに株を集中させた場合、後継者が事故や病気で死亡する、あるいは責務を果たせない状態になることが最大のリスクであることを認識すべきです。また、後継者がスチュワードシップに欠ける、事業の発展よりも個人の利益や享楽を優先させる人物であった場合に、社長を解任するための法的手段の一つを失うことになります。

さらに親の立場として、子供たちに分け隔てなく財産を渡したいという、親としての願いが叶わないことになります。後継者には会社の株を、他の兄弟姉妹には現金化しやすい資産を、株と同等額になるように相続させるという考え方は理想的なものですが、実際にはほとんどのオーナー社長は、余剰資金を個人の財産形成よりも会社への投資に優先的に回しており、なかなか理想どおりにはいかないものです。

兄弟姉妹のうち、会社に勤める者だけに株を渡すという考え方も一般的なものです。社外に株を分散させないという意味では有効ですが、さらにその子供たちがすべて会社に勤めるようになるかどうかはわかりません。次の世代でまた同じ問題が起きてきます。

ファミリーの理解が不十分のまま、相続の時点でいきなり株を集中させると決めることはかえってファミリーの調和を乱す原因になります。また、株を与えられないファミリーメンバーは、創業家のメンバーとして、ビジネスの守護者としてのアイデンティティーを失うことにもなります。

さらに会社が成長するに伴い、集中して株を相続するための相続税の負担は半端なものではなくなります。会社が成功するほど、株を集中させることが難しくなるのです。社長として高額の報酬をとりながらも、そのほとんどを相続税の分割納付に回し、家族に持ち帰ることができる手取りは一般社員よりも少ないという例も珍しくありません。

次回に続く

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