オヤジとムスコの対決

事業継承の話題として「オヤジ」と「ムスコ」の問題をお話したいと思います。

「オヤジ」と「ムスメ」の場合には、それほど問題にはならないのですが、ファミリービジネスコンサルタントとして私が受ける相談のうち、これは三大課題に入る問題です。多くの社長や後継者が、親子の関係に悩んでいらっしゃいます。

「オヤジと怒鳴り合いになって、まともな話ができない」「すぐ喧嘩腰になる」「母親を通してしか話が通じない」「親子げんかに社員は困り果てている」などといった悩みです。私自身も後継者時代に父親とよく口論をしました。会社と家の往復の車の中で、ときには大声で怒鳴り合いながら、経営方針や社員の処遇などを巡って議論しました。その時は心の中で「くそオヤジ!」と思い、はらわたが煮えくりかえる思いでしたが、少し時間が経つと不思議にオヤジの気持ちもわかるような気がしたものです。

私が家業にいたころの業界団体の後継者の会がありました。もう30年以上の付き合いになりますが、毎年暮れに集まり、互いの健闘を称えたり、励まし合ったりしたものでした。全員がファミリーとビジネスの両方を背負い、責任感が強く、勉強熱心で気持ちの良い人たちです。古い業界だけに、この30年の時代の変化にそれぞれの会社も大きく変化してきました。

私のように会社を閉じざるを得なかった人、先細りを知りながらも懸命に事業を守り続けている人、中には数少ないですが大きく業態を転換して大成功している人もいます。誰かが「オヤジと喧嘩してきた人は?」と声を上げると、7割ほどが手を上げましたが、その中でも、成功している人たちは「しょっちゅう大喧嘩をしたよ」と胸を張って答えました。

とても自然に腑に落ちる感覚がありました。オヤジは、成功のための試練を意識的にせよ、無意識にせよ、彼らに与えたのだと思います。

次号に続く

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