オヤジとムスコは世界の見え方が違う

神話の時代から言われているように、父親というものは息子にとって永遠のライバルです。父親は人生の師でもあり、超えなければいけないものでもあります。

ファミリービジネスにおいては、オヤジとムスコの関係は、親子であると同時に上司と部下という二重の関係を持つものです。そのため、この関係のマネジメントは難しいことですが、ファミリーとビジネスの関係の縮図がここにあるともいえます。二つの関係を併せ持つため、特に世代交代のストレスが高まる時期には感情的にエスカレートしがちになるのです。

オヤジとムスコの育った時代には三十年ほどの隔たりがあります。青春を過ごした時代の違いによって着るものの趣味が違うし、カラオケで歌う歌も違うものです。世の中を体験しながら学ぶ多感な時期を、高度成長期に過ごしたか、バブル崩壊後に過ごしたかで、時代の背景が違うため、ものの見かたやビジネスに対する価値観も違ってきます。つまり、「心の地図」がまったく違うのです。意見が合わないのは当然です。むしろ違う方が自然です。

さらに、大きな影響を持つのがライフステージの違いです。人生の段階によって心理的な基盤が変化するためです。次の表のような違いはライフステージの違いから起きるものです。

 オヤジムスコ
会社を守るために保守的になる保守的になりすぎないようにする
ビジネスに対して収穫を求める種まきをしたい
社員に対して「やってみせろ」「俺を信じろ」
取引先から重要人物として見られたいリーダーとして見られたい

世代交代の時期は、オヤジにとってもムスコにとっても試練の時期です。ムスコは自分がリーダーとして認められる人間になれるのか、いつになったらオヤジに認められるのかという葛藤に悩みます。

一方、オヤジはそろそろ引退の準備をしなくてはいけないと、頭では理解するものの「自分がいなければこの会社は成り立たない」、「会社をとったら自分には何も残らない」、「忠実な部下の面倒を見なければ」、「本当にやりたかった仕事はまだできていない」、「こんな状態ではムスコに渡せない」などの思いから引退を先伸ばしにしたり、無意識に目をそらせたりします。オヤジにとって、引退は自身の死に直面するプロセスであり、心の深い部分で葛藤に苦しむ時期でもあります。

次号に続く

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