MTA（Most Trusted Advisor）という言葉があります。
ファミリーが心から信頼を寄せるアドバイザーで、ファミリービジネスに多大な影響力を持ち、事あるごとにオーナー家から相談を受けるアドバイザーのことです。
米国の9名のMTAを対象に、その共通点を調査した研究があります。※ 9名は社内の取締役、社外取締役、独立コンサルタント、ファミリーオフィスのCEOなど、立場は様々ですが、皆オーナーファミリーがMTAとして信頼する人たちです。
この調査の結果、MTAに共通する項目として以下のものが挙げられました。
●MTAとして頼られる特質（話を聞くに値する人である）
誠意：
MTAとしての自覚を持ち、自己の価値観に忠実で、信頼に値する、クライアントファミリーとビジネスの利益を深く考える人で、人の話をよく聞き、誠意をもって考えを伝える人である。
能力：
高い能力と、ファミリービジネスにおける豊かな経験、幅広い知識を持つ人である。
●個別対応をいとわない（ファミリーメンバーと同調するきめ細やかなプロセス）
個別対応：
ひとりずつとの対応を通じて、メンバー同士がどのように関係しているかを理解している。
全体への貢献：
アドバイザー本位でない客観的なアドバイスを行い、先入観なくものを見て最悪を想定できる。複数のアドバイザーの知恵を活かし、ファミリーとビジネスの全体の利益を考えている。
ファミリーの意思決定を尊重：
たとえ完全に同意できなくても、ファミリーの意思決定と目標設定を受け入れ、支援している。
●ファミリーの個人と全体の利益のためのファシリテーション
協力的な相互関係づくり：
MTAは、①各人の能力開発を手伝い ②ファミリーメンバーが全体の利益を念頭に置くように導き ③ファミリー全員で意思決定を行うことを助けて、ファミリーの協働を支援している。
気配りのあるガバナンス：
ファミリーメンバーに対して、ときにはペースダウンし、立ち止まり、意思決定がもたらす結果を熟考するように働きかけている。
これらの項目から、MTAの人物像をイメージしていただけたのではないかと思います。同時に会社の事業とファミリーにマッチした優秀なMTAは、ファミリービジネスの永続と発展の実現のための、心強いパートナーであることもご理解いただけると思います。
※The Most Trusted Advisor and the Subtle Advice Process in Family Firms, Vanessa M. Strike, 2013
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