減少する親族内承継

近年では、中東諸国、インド、シンガポール、香港などアジア諸国でこれらファミリーガバナンスの取組みを行うファミリービジネスが急速に増えています。

また中国においては、改革開放政策によって生まれた企業が世代交代の時期を迎えており、ファミリービジネスの経営論を教える大学が生まれ始めています。

9000社と言われる世界の200年超の企業のうち、約4000社は日本の企業であることからも、我が国は、長寿企業大国と呼ぶことができ、そのほとんどはファミリービジネスです。

しかし近年、日本のファミリービジネスは減少の傾向がみられ、危惧すべき状況にあると言えます。

2014年の中小企業白書では、親族内で行われる事業承継が、親族外承継(内部昇格、外部招へい、買収)の件数に比べて減りつつあることが報告されました。かつては7割近くが親族内で承継されていて、創業ファミリーが事業を継続発展させていましたが、2007年ころから親族内の承継は5割を切る状況になっています。(図) [2014年 中小企業白書, 2014] 

これらは特に戦後生まれの企業に当てはまることと思われます。200年超の企業においては、イエ制度に由来するファミリーガバナンスが代々引き継がれていますが、戦後生まれのファミリービジネスにおいては、財閥解体の心理的な影響や、ファミリーとビジネスの分離派の概念的な影響もあり、ファミリー内で後継者の育成に力を入れず、後継者の不在が深刻な課題になっています。親族内承継の減少は、ファミリービジネスの強さの源泉である「ファミリネス」が失われる危機であり、日本経済にとって大きな損失と言わざるを得ません。

図 減少する親族内承継 (2014年 中小企業白書 「形態別の事業承継の推移」)

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