ファミリービジネス:葛藤の統合

個人か全体か

個人の幸福を尊重すべきか、全体の利益を追求すべきか。ファミリーの中でも個人か、ファミリー全体かという葛藤が起きがちです。イエ制度においては、個人よりもイエ全体を優先するため、ファミリーメンバーは、個人の希望よりもファミリーメンバーとの関係やイエ組織における役割を優先させてきました。戦後個人主義の時代になり、結婚や職業の選択も個人で決めるべきものになり、ファミリービジネスへの参画も個人の自由であるという前提があります。しかし、その前提を貫けない事情も多くあり、ファミリーメンバーは個人か、全体かという選択を常に迫られているように感じるものです。個人も全体も両方大切です。各メンバーが心身ともに成長しながら、主体性を持って全体に関わり、力を注ぐことが望ましい姿です。

ファミリーかビジネスか

これはファミリービジネスの関係者、つまりスリーサークルモデルの中のそれぞれの立場に立つ人にとって究極のテーマで、「ファミリービジネスパラドックス」と呼ばれるものです。立ち位置によって、短期的な利害関係は異なりますが、長期的、大局的には全ての関係者がファミリービジネスシステム全体に影響を与えている、という点で利害が一致しています。

ファミリービジネスシステムの中で日々を過ごしているメンバーにとって、自分たちがファミリーとビジネスのどちらに軸足を置いているのか、バランスを欠いていることはないか、という点について、自ら判断することは難しいものです。できるだけ客観的に現状を把握し、目指すべき方向を見出すため、ファミリービジネス研究者のRandel S.CarlockとJohn L. Wardは、簡単なアンケートを作成しました。 (“Strategic Planning for the Family Business” Randel S.Carlock, John L. Ward)これは、当該ファミリービジネスが、ファミリー志向かビジネス志向かを評価するものです。ファミリービジネスにかかわる主なメンバーにアンケートに答えてもらい、各人の得点を比較してみると、ファミリービジネスの全体的な傾向や、それぞれのメンバーの志向の違いが読み取れます。このようなツールを活用しながら、ファミリーが今どんな状態なのかを共有します。

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