映画 House of Gucci でみるファミリービジネス 前編

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Gucciファミリーについては、ファミリービジネスコンサルタントの間で、以前から取り上げられ、勉強会などでも扱われています。三代以上の歴史を持つ企業ですが、残念ながら現在のGucciブランドにファミリーメンバーは一人もいません。FBAAとクライアントのファミリーミーティングで映画鑑賞後のディスカッションを行いました。我々なりに、この物語からファミリービジネスの関係者が何を学ぶべきかを考えてみました。

株は公平に分ける

初代のグッチオは、子供たちに株を均等(平等)に分けました。しかし、女性の姉妹には渡らず、男尊女卑の背景が見てとれます。さらに、平等と公平を考えると、会社への貢献に関係なく等しく分配したことは、この物語のトラブルの火種となっています。平等(一様に扱う)と公平(能力や貢献に応じて適切に扱う)の区別が大切だと考えます。

スチュワードシップを持つ

映画の主人公でもあるマウリツィオは質素倹約で育てられましたが、社長になった途端にスーパーカーを買いました。日本のファミリービジネスでも、よくある話です。長寿ファミリービジネスに共通する価値観に、スチュワードシップがあります。これは、財産の管理人としての意識で、会社は先祖から預かりより良いものにして子孫に渡すという考え方です。Gucciファミリーにはこの姿勢が欠けているように見えます。

自分も問題の一部と知る

マウリツィオが妻のパトリツィアがファミリーに入ったことで親族間の仲が悪くなったと思い込んだように、誰かのせい、という被害者意識がそれぞれのメンバーにあるように見えます。ファミリービジネスでは、ファミリーの小さな変化が、ビジネスに反映して、ファミリー全体を大きく揺さぶることになりがちです。人のせいにすることで、この揺れが止まらなくなります。誰かのせいにする代わりに、自分も問題の一部だと考える力をつけたいものです。ファミリーは、単純な因果関係でなく、原因と結果が連鎖する円環的な生き物であって、その中にいる自分もその原因をつくっていることを知ることが解決の糸口になります。

話し合いの場をつくり参加する

安心して話せる場、愚直に話し合う場を意識してつくることが必要です。Gucciファミリーには、パーティーや食事など社交的な場はあったようですが、ファミリー全員が参加して、ファミリーやビジネスについて本音を話す場がなく、ほとんどの親族間の会話がまるで騙し合いや探り合いのようなものになっていたのが残念です。

ブログ後編に続く

映画『ハウス・オブ・グッチ』|大ヒット上映中 (house-of-gucci.jp)

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