登壇しました:日経トップリーダー『誤算に学ぶ経営者の本音セミナー』

6月24日に東京・御茶ノ水で、日経トップリーダー主催の『誤算に学ぶ経営者の本音セミナー』で、コメントする立場で登壇しました。メインスピーカーは、ワタベウェディング元会長の渡部隆夫氏です。

渡部氏の母親が京都で立ち上げた貸衣装店を引き継ぎ、550億円を超える企業グループに育てました。ところが、長男に社長を渡してから13年後の2021年、ADR倒産に至ります。他の企業の学びのために、普通ならば話したくないような内容を開示してくださったことに対して敬意をもってお話を伺いました。

渡部氏曰く、失敗の原因は息子への事業承継だった、とのこと。事前打ち合わせの際、経緯を詳しくお聞きしていて、私が当日お話させていただいたポイントは、以下のとおりです。

  • ファミリービジネスにおいては、ビジネスもファミリーも両方経営する必要がある。残念ながら、元会長はファミリーの経営に失敗なさった。
  • ファミリー内のコミュニケーション、特に親子の対話が欠けていた。通常は、親子で意見が食い違い、対立が起きる時期があり、この対立の時期が非常に重要で、お互いの価値観を学ぶ時期でもある。渡部親子は、対立どころか、対話すらなかった。その結果、息子に大切にすべき価値観を伝える機会がなかった。
  • 渡部元会長には弟さんが二人いて、3名が同世代チームとして経営に参加して助け合っていたが、息子さんには同世代のファミリーメンバーが会社におらず、信頼すべき経営メンバーの選択を誤った。
  • イエの概念の相違があった。元会長は、息子は自然にイエの方針を受け継いで、事業を経営するものだと信じ切っていた。一方、息子は、イエの概念は希薄な世代であった。この違いを話し合う機会もなく、「言わなくてもわかる」と信じ切っていた。
  • 「会社は誰のものか」-長寿企業のオーナーは、会社は預かり物であると考えている。神仏から預かり、先祖から預かっていると考え、次世代に渡すことを最優先にする。例えば、エルメス一族は「会社は子孫からの預かり物なので、より良いものにして子孫に返す」と考えている。残念ながら、渡部ファミリーは、この預かり物という価値観はなかったように見える。

取材の段階で、息子さんのお話を聞くことができなかったので、一面的なコメントになっていると思います。本当につらく悲しい話です。私は誰かを悪者にして、評価、判断するべきものではないと思います。誰かのせいではなく、ファミリーシステムが、情緒や心理を上手く扱えず、機能不全を起こした結果がビジネスを手放さざるを得ないという結果につながったものと考えています。

参加した皆様がビジネスの経営だけではなくて、ファミリーの経営にも心を配ることのきっかけになれば有難いと思っております。

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