第4世代ははとこ共同所有(ファミリーダイナスティ)に

4世代目になると、更にはとこ同士の株主になります。中には互いに顔を見たこともない、話をしたことがない株主もあるほどです。共通の曽祖父を持つという関係ですが、祖父母の記憶があっても、曽祖父を記憶している人はほとんどいないでしょう。多くの場合、祖父母を共有する血縁関係者を親族と受け止めるのですが、曽祖父を中心とするつながりは、身近に感じにくい関係です。次の章でお話しするファミリー評議会などの取組み無くしては、一族の意思を統一し、オーナー集団としてビジネスの発展に対する強い決意を維持、育成することは困難な段階です。また、分家の数が増えた場合、分家の長が分家を代表して株主となる、分家集団所有の形態も見られます。

表○○ 分散オーナー型の発展段階
オーナータイプ参加者主な課題
単独所有 夫婦共同所有単一ファミリーファミリーの参画、承継、リーダーシップの移転、引退、ファミリーのスキル育成
兄弟姉妹共同所有第2世代のファミリーメンバーと配偶者チーム作り、共通目標の確立、共通の利益、ファミリーの調和、ファミリー教育
いとこ集団所有第3世代、それ以降の世代のメンバー、 いとこ、はとこ (ビジネスの参加、不参加を問わず)株主としての課題(株の売買、分配) ファミリーのビジネスに対する意欲の醸成、ファミリーの伝統と歴史、社会貢献活動、次世代株主構成、移行プロセス
ファミリーダイナスティ・分家集団所有第3世代、それ以降の世代のメンバー、 いとこ、はとこ (ビジネスの参加、株主)株主としての課題(株の売買、分配) ファミリーのビジネスに対する意欲の醸成、ファミリーの伝統と歴史、社会貢献活動、当主の選出、次世代株主構成、移行プロセス

分散オーナー型の問題点は、均等に株を持つ子供たちが、同じだけの能力、情熱、知識や教育レベルを均等に持っているわけではないところにあります。株主として会社にどう寄与するか、会社の状況をどの程度理解しているか、親族内で株を保持することにどの程度コミットしているか、など、様々な問題が表出してきます。さらに世代が進むと、ひとりあたりの持ち株比率が極端に下がり、ファミリーとして会社にどのように影響力を行使できるのかが見えにくくなっていきます。分散オーナー型を取る場合、単独オーナー型以上にファミリーのまとまりが必要になるのはこのような理由からです。

欧米においては、かつては多かった単独オーナー型ですが、ファミリービジネス研究が進むにつれて分散オーナー型を取るファミリービジネスが増えています。その理由の一つに、次の章でお話しする、ファミリーガバナンスのための方策が整えられてきたことがあります。さらに、種類株式や信託などの制度によって、株を分散させながら議決権を集約させられる方策が整えられてきたことも分散オーナー型を進めやすくする要因になりました。ファミリーガバナンスをしっかりと構築することによって、分散オーナー型のデメリットと思われたことが、逆にファミリービジネスの強味に転換できる条件を整えることができるのです。

我が国には単独オーナー型と分散オーナー型の混合型が多く存在します。例えば父親の死後、事業を継ぐ長男が大半の株を、兄弟姉妹が残りを分配し、後から長男が兄弟姉妹から分散した株を買い戻すというパターンや、創業世代は兄弟に株を分け、第2世代以降は各分家の長男が分家ごとに集中して相続を受けるパターン、主力会社の株は直系長男が継承し、関連会社の株を兄弟姉妹、分家単位で受け継ぐパターンなど、様々な形があります。単独オーナー型と分散オーナー型の二つの基本パターンに分けて考えることで、単純化し、その長所、短所を比較してみます。

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