なぜ日本にファミリーオフィスが定着しないのか?

シンガポールを中心に活発になっているファミリーオフィスの設立だが、
勉強会の参加者から、「日本ではファミリーオフィスが少ないと聞くが、その理由は?」
と尋ねられた。

文化面の理由と制度面の理由が考えられる。

<文化面:「家督」の考え方の名残>
家督とは、明治民法で規定された、
ファミリーの資産は家長に属するものとする制度。
江戸時代に定着した武家の嫡子単独相続制度を元に、明治民法が定めた。
戦後の民法で廃止されるが、
現代のファミリービジネスの承継においては、
特に会社の株について、後継者の単独相続の習慣が定着している。

このため、「ファミリーの共有財産」として共同で管理するという発想に乏しく、
ファミリーオフィスにつながりにくい。

<制度面:重い相続税>
ファミリーの財的資産を次世代に移行する際に、
ほとんどのオーナーが考えるのは、
いかに相続税を低く抑えるか、という事。
ファミリーオフィスが目的とする、
ファミリーの共有資産をいかにファミリーや社会のために役立てるか、
というところまで視野が広がらない。

事業承継を支援する金融機関や税務専門家も、
相続税対策に終始していて、ファミリービジネスのオーナーと共に
節税対策にエネルギーを費やしている。

韓国50%、台湾20%を除いて、
ほとんどのアジア諸国の相続税率がゼロであるのに対して、
最大で55%という重い相続税が、
日本のファミリービジネスの社会貢献の意欲を削いでいることは非常に残念なことだ。

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