ファミリーとビジネス、異なる価値の重複
会社で働くファミリーメンバー、特に社長や後継者などのビジネスとファミリーが重なる部分に位置する人は、二つの異なる価値観を同時に持つことになります。
この二つの異なる価値観は、時として当事者に大きな課題を投げかけます。あるときは二つの選択肢からどちらを選ぶべきか、という迷いとして表れます。またあるときは、無意識のレベルで、イライラや怒り、憂鬱などの感情を引き起こします。
適切な境界線を保つ「帽子のかぶり分け」
優秀なファミリービジネスの経営者やファミリーのメンバーは、ファミリーとビジネスの境界線を上手に保っているものです。親子や兄弟の問題はファミリーの価値観で解決し、ビジネスの場には持ち込まない。逆にビジネスの問題はビジネスの価値観で解決してファミリーの場には持ち込まない。いわばビジネスとファミリーの二つの帽子を上手くかぶり分けています。二つの帽子を同時にかぶったり、相手と違う帽子をかぶったりすると、ファミリービジネスの弱みが出やすくなります。
ファミリービジネスコンサルタントがよく例に出すエピソードがあります。Fortune誌の全米の「働きたい会社ベスト100」に入っている会社での話です。ユニークなスーパーマーケットとして有名なステュー・レオナルドという会社です。社長の長男も次男も父の会社に入ってまじめに働いていました。三男も大学を卒業して父の会社に入りますが、遅刻や早退が続き、会社での勤務態度もよくありません。業を煮やした父親は、ある日三男に仕事の後に自宅に来るように伝えます。
リビングルームで三男に向かって「このような勤務態度では雇い続けるわけにはいかない。君はもう会社に来なくていい」と解雇を伝えます。その後、三男をジャグジーに誘い「息子よ、会社をクビになったそうだが、何かお前にしてやれることはないか?」と息子の将来を心配したということです。理想的な帽子のかぶり分けです。その後、他社での勤務を通して成長した三男は、今では父の会社にもどり、活躍しています。
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