継承後のビジネスの準備 

現社長の重要な仕事は、自分がいなくなってもビジネスが成長していくようにすることです。そのためには「もし業界の経験のない人に会社を売却するとしたら、会社の価値を高めるために何が必要だろう?」と考えてみることです。

経験のない人がオーナー社長として来ることを考えると、自分がいなくても会社がスムーズに運営され、何年でも自力で成長していける組織が必要です。渡す相手が後継者でも同じです。そのために望ましいのは、売り上げ利益の成長が見込める状態、将来にわたって魅力的な商品やサービスを作り続ける能力、責任感があり熟練したスタッフ、月次で正確に状況を伝える会計システム、意欲と秩序を生み出す制度や規程などが、社長交代の時までに完備されることです。

世代交代を機に、ビジネスが長期にわたり成長、発展を続けるための施策として、二つのことが重要です。ひとつは社外取締役の採用を含めた、取締役会の機能化です。これは事業承継計画の推進役、チェック役としても重要な役割を果たします。また、特に創業世代から第二世代に渡すときには、取締役会の機能化が重要な課題になります。なぜなら、創業者はオーナー(所有)、取締役(監督)、マネジメント(執行)の3つの役割をひとりで演じているからです。創業者はこの3つの役割をひとりで担いますが、世代交代後に後継者が同じ3つの役割を担うことは難しい場合が多いものです。世代交代に際して、この3つの役割を明確にし、特に取締役会がオーナーとマネジメントの調停者としてバランスをとる支点(バランスポイント)の機能を果たすことが重要です。このことによって、世代交代が円滑に行われることになるのです。

もうひとつは、経営理念の構築(再構築)です。経営理念の再構築は、誰のための会社か、会社の使命は何か、何に価値を置くのかを明確に文章化し、経営の指針とするものです。状況によっては再構築した経営理念に基づいて事業戦略を見直し、新たな戦略を立てることが必要になります。後継者がリーダーとなって、経営理念や事業戦略を見直すプロジェクトを行うことは、新しい経営チームの育成のためにも良い機会です。プロジェクトを通して、互いの考えを理解し、同じ目標を共有し、チームワークを高めることができます。

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