次期経営チームの育成

創業者と違い、後継社長がひとりで会社を動かすことは難しいものです。なぜなら、世代交代の頃には組織は創業時より複雑になり、利害関係者の数は増し、管理すべき要素が格段に増えるためです。

そこで、後継者を中心とした次期経営チームの育成が必要になります。このチームにおいて、後継者はメンバーの意見を真剣に聴く必要がありますが、意思決定は多数決で行うべきではありません。あくまでも、後継者が会社のビジョンや価値観に基づいて決定し、メンバーはそれを意欲的に受け止めるというチームを作ることがポイントです。

私はある企業で後継者とその次世代経営チームメンバー数名のメンター(相談・育成係)になっています。定期的に各メンバーの相談に乗り、ときには質問し、ときにはアドバイスをしながら、後継者としての成長を支援してきました。同じ問題の堂々めぐりを繰り返したり、一向に改善しない業績にスランプを感じたり、苦心してまとめられたプランを社長に一蹴されたりすることも多々ありました。各メンバーは、毎日の業務を通して経験を重ねながら、中間管理職としての悩みをひとつずつ解決し、一歩ずつ、着実に成長してきました。

最近になって、後継者チームにも徐々に権限が委譲されてはきたのですが、後継者チームとしてまとめた意見がNOと言われたり、現場の人たちの反感を買ったりして、なかなか会社に浸透していませんでした。彼らには大きな壁があり、その壁は後継者チームとして乗り越えなければいけないということがチームの暗黙の共通認識になっていました。

そんなときに、ある出来事をきっかけにして、社長予定者や次期経営チームメンバーに、一気に意識の変化が起きました。各人の発言から、今までとは違う会社の業績と社員の幸福を担う経営者としての意識が感じられました。しっかりと地に足がついた彼らから発せられる言葉は、重みのあるもので、責任をとっている人の説得力を持つものでした。

その出来事とは、現社長が引退の時期を表明し、後継者を正式に指名したことです。

三年先ではありますが、社長交代の時期を明確に発表したのです。内外に向かって、社長交代の時期を明確に発表することは、後継者やその経営チームの意識や気持ちを育てるために不可欠な手続きです。

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