「ファミリービジネスの株は分散させるな」は本当か?

集中オーナー型か、分散オーナー型かの議論については、わが国の専門家のほとんどは「株を分散させるな」とアドバイスします。

会社の株は、イエ原則が機能していた時代の「家督」に相当するものですので、このアドバイスは、オーナー社長にとって納得感があるものかもしれません。しかし、一方では民法が規定する遺留分制度の趣旨に反するものでもあり、このアドバイス通り実行するには、ファミリーメンバーの理解と協力が必要になります。

民法に矛盾するこのアドバイスが、なぜ一般的なものになっているのでしょうか?そこには、株を分散させることによるリスクを回避する目的があります。最も大きなリスクは、議決権が分散することです。オーナー社長が3分の2以上の議決権を持っていれば、大抵の意思決定はオーナー社長単独でできるのですが、それでも100分の1の議決権があれば株主総会に議題を提出できますし、100分の3あれば株主総会の招集請求、帳簿閲覧請求、役員解任請求などの権利を行使できます。会社にいやがらせをしようと思う者がこの権利を行使すれば、オーナー社長は3分の2以上の議決権を持てば単独で否決することができるものの、大変面倒なことになり、頭の痛い問題になります。

役員の選任、決算の承認などは2分の1の議決権が必要になります。株の分散の結果、社長に反対する者が2分の1以上の議決権を持てば、社長は解任される事態になることも想定しなければなりません。

このように、オーナー社長の意図通りに経営できるようにするためには「株は分散させるな」はリスク回避という意味でメリットがある方針です。

しかし、株を集中させることによるデメリットはあまり語られることがありません。もともと民法の主旨に合わない方針であるため、様々なデメリットが生じます。

次回に続きます。

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