ファミリーとビジネス:分離から統合へ

ファミリービジネス研究の現在は、ガバナンスに関する議論が主なテーマになっています。

米英的な不特定の多数株主を踏まえた、マーケット型のコーポレートガバナンスと、欧州型の創業・オーナーファミリーの限定的な少数株主を中心とするコントロール型のコーポレートガバナンスの比較や、ファミリーのガバナンスが事業の収益に及ぼす影響などの議論が行われています。

長い間、経営学者やコンサルタントはファミリーとビジネスを別のものとして扱い、ビジネスからファミリーを排除すること、逆にファミリーにビジネスを持ち込まないことを理想としてきました。しかしファミリービジネス研究の結果、このような「分離派」のスタンスをとる研究者やコンサルタントはほとんどいなくなり、ファミリーとビジネスを一体のものと考える「統合派」が主流になっています。

これらの研究成果を踏まえ、世界の多くのファミリービジネスは、コーポレートガバナンスに加え、ファミリーガバナンスの強化に取り組んでいます。

ファミリーガバナンスとは、創業・オーナー家が、自らの役割・責任を定義し、自らを組織化し、さらにビジネスとの関わりを定義・組織化する取り組みです。ファミリーガバナンスによって、ファミリーの声は一つになり、ビジネスやその関係者に明確なメッセージを伝えることができるようになります。

創業一族が本家・分家の代表者を集めてファミリーの重要事項を取り決める「ファミリー評議会」や、ファミリー全員が集まり親睦を深める「ファミリー総会」など、定期的な話し合いの場を作り、ファミリーガバナンスの機能を高めています。

ファミリー評議会、ファミリー総会では、次世代の企業家精神やビジネス能力育成のための教育、創業者の志を伝える活動、一族の絆を強める活動などを行い、ファミリーメンバーが会社に入るための条件や報酬の規定などが重要課題になっています。また、経営幹部との情報共有やオーナーとしての要望のとりまとめも行います。

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