スリーサークルモデル:どの場所にいても影響力がある

前回に引き続き、ファミリービジネスの基本である、スリーサークルモデルです。

具体的な例をお話します。例えば、社長(G)に、姉(B)がいたとしましょう。

会社の仕事に関わっていない、株も持っていない、Bの位置にいる人です。社長の姉としては、もともと彼女の父親の会社ですから、子どもの頃から、自分の庭のように会社の敷地で遊んでいたかもしれません。姉には息子がいて、彼は定職につくことができません。弟社長に、「息子がアルバイトをしているけど、すぐイヤになって辞めてしまうから、何とか会社で雇ってくれないかしら?係長くらいでいいから。」と、弟に頼みます。頼まれた弟社長は、どう思うでしょうか。

ファミリーのメンバーの、大事な実姉からの依頼です。真剣に頼まれました。でも、ビジネスの長としては、もしそれを受けてしまったら、社員から、「なんだ、身びいきな!あんなダメ息子をそんな役付きにするのか?いきなり係長にしちゃうのか!?俺たちの立場はどうなるんだ。何年もひらでやってるというのに!」というような批判も社内で出るでしょうし、社員との信頼関係にも悪影響となり、社員のモチベーションを下げてしまうでしょう。Gの位置にいる弟社長は、非常に悩むことになるわけです。

別の事例を見てみましょう。社長の一人娘はBに位置しますが、自分の結婚相手が将来父親の跡を継ぐことになる可能性が高く、そのような目で結婚相手を探すことになります。好ましい男性と恋愛関係になったとしても、男性は相手が社長の一人娘、と知ったとたんに気後れし、女性から離れていくという話もよく耳にします。

一方、ファミリーとは関係ない、Cの位置の従業員から見ると、そのようなことで悩む社長はもどかしく見えます。それは、彼らがファミリーとは関係ないからです。ファミリーの財産を担保に入れたり、個人保証したりしながら、ビジネスをやっていこうと思っている社長の気持ちは、一般社員にはなかなか切実なものとしては受け取られにくいものです。「家の全財産までつぎ込んでやってるんだぞ、わかっているのか!?」といくら言われても、そのようなことは、Cにいる人には実感できにくいでしょう。

別の事例では、Eにいる社長の息子は、社長(父親)の経営に対して時代遅れだと感じています。ところが父親に逆らってはいけない、というファミリーの価値観から客観的な話し合いができず、必要以上に感情的になって、けんか腰になったり、逆に極端に受動的になり、怒りを内に秘めて悶々としてしまい、パフォーマンスが下がることがあります。

相続税対策の相談を受けた税理士が、Aの立場だけを想定して節税効果の高い資産承継計画を立てた結果、BやEのファミリーメンバーから予期せぬ反発を受け、暗礁に乗り上げるということもよくあることです。

このように、スリーサークルモデルの輪のどこにいるのかによって思いは様々、違ってくるわけですが、どこにいるかに関わらず、このファミリービジネスという、大きなシステムのメンバーであることには違いありません。この大きなシステムのどこかに属していることで、他のメンバーに何らかの影響を与えていますし、何らかの影響を与えられているのです。どこにいても影響を及ぼしていることを知っておくことが重要です。

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