ファミリネス:ファミリービジネスの強さの源泉

サブシステムからなるひとつのシステム

スリーサークルモデルは、全体であるファミリービジネスシステムを形作るサブシステムとして、ファミリー、ビジネス、オーナーシップが、それぞれが相互に長期的に影響しあうものであることを表しています。

言うまでもなく、ビジネスはファミリーに対して、長期的に金銭的な安全を与える存在です。ビジネスで得たお金は、ファミリーの生活水準を保証し、次世代の教育を確保するものになります。お金の蓄積は金融機関に対するファミリーの信用力を高めるものになります。さらに、ビジネスはファミリーメンバーの就業の場を提供するという意味でもファミリーを支える存在であり、ファミリーのビジネス教育の実地訓練の場にもなるものです。

逆にファミリーはビジネスに対して何を提供するべきなのか? このことはともすると忘れられがちになる重要なことです。多くのファミリービジネス研究者やコンサルタントが、「ファミリーはビジネスの価値を高める存在でなければならない」、と主張します。ファミリーはビジネスの守護者、支援者として、経営のリーダーシップをとる優秀な人材を育成し、創業の精神やファミリーの文化に基づく理念を伝え、企業の競争力を高める者であるべき、という事です。

その中で、ファミリーがビジネスに対して与える影響がビジネスの競争力を高めるものである、という考えについて、つまりファミリービジネスの競争力の源泉は、ファミリーにあると言う、ファミリー性(ファミリネス)について、次にお話ししていきます。

ファミリネス=ファミリービジネスの強さの源泉

ファミリー企業がなぜ強い存在であり続けるのか、その理由はさまざまな角度から論じられていますが、その中に、創業家の持つ理念や価値観が事業の競争力の源泉になる、という見解があります。

成功するファミリー企業には、創業家にその起源をもつ競争力の源泉となるものがあります。この創業家が持つ競争優位性の要素のことを「ファミリネス」(ファミリー性、Familiness)と呼んでいます。正式な定義は、「ファミリー、個人およびビジネス間のシステム相互作用から生じる、企業に固有な資源の束」(※出典 「ファミリービジネス」後藤俊夫)です。つまり、ファミリーが関与することで生まれる経営資源の総称です。これはファミリービジネス研究者による造語で、創業家が関与することで生まれる経営資源の総称を示します。ファミリネスは、創業の精神やファミリーの価値観、文化を根源として、長い年月を通してビジネスの文化や価値観、いわば暗黙知として根付いているもので、一朝一夕に生まれるものではありません。だからこそ、他社にはまねができない、その企業独自の競争力の源泉になるのです。

優秀なファミリービジネスでは、顧客第一主義、高品質・低コストの追求、従業員の長期的な人間性の育成、長期的な視野、ブランド価値向上のたゆまぬ努力、市場、顧客に対する強い探究心、柔軟な組織運営、社内外の高い信頼関係、高いコミュニケーション能力など、創業家が代々大切にしていることが、ビジネスの文化として根付いています。強いファミリーを築きファミリネスを維持、発展させたファミリー企業は、そのメリットを享受できるようになりますが、これを怠ったファミリー企業は、その特有のシステムが持つファミリーとビジネスの構造的な矛盾点が表出し、衰退の道を進むことになるのです。

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