ファミリービジネスと心の発達

ビジネスファミリーの会議の中で、しばしばメンバー間の意見の不一致に出会います。それぞれが自分の心のクセで、考え、話すからです。

理路整然と話しているように聞えますが、よくよく聞いてみると、「自分の言うとおりにしろ」であったり、「自分の存在を認めろ」であったり、「バカにするな」や「恥をかかせるな」、また、「仲間はずれにしないで」と発言しているようにも聞こえます。

ハンガリーの精神科医で精神分析家のマーガレット・マーラー(1897~1985)は、正常な子どもというのは、生まれてまもなくは安心・安全な居場所を確保され、母親のケアを要するものの、生後半年くらいからは徐々に別人格として分離していく必要があると考えました。このことを分離・個体化といいます。言い換えると、体は生まれても、心はまだ生まれていない状態で、心はその後、分離・個体化によって初めて生まれる、ということです。

この分離・個体化の過程がうまくいかないと、その後の人生でも同じテーマでつまずきます。恥に対する過大な恐れや、見捨てられ不安などが大人になってからも影響します。本人だけでなく周りも、未成熟な心に振り回されることになるのです。

分離・個体化が幼児期に完了できなくても、その後の人生で心を育てることは可能だと言われています。とはいえ、分離・個体化で100点満点をとれるような人はいません。誰もが完璧ではないことを理解して共有していただきたいと思います。

分離・個体化モデルをファミリーで共有できると、たとえ親子間、きょうだい間で意見が違っても、互いを理解しやすくなりますし、新しい可能性が見えてくるだけでなく、ファミリー全体が一歩前進できるように思います。

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