ファミリーの社会関係資本

事業の資産だけでなく、ファミリーメンバーが持つ現預金、有価証券、不動産などを財的資本と呼びます。肯定的な関係を持つファミリーは財的資産も融通しあうことが多いです。また、社会的信用が高いファミリーは、外部の財的資産も使いやすいものです。

人的、社会関係、財的資本のなかで、ファミリーの社会関係資本が最も重要なものです。ファミリーの人的資本、財的資本を有効に活かすために必要不可欠なものだからです。ファミリーの資本が事業にどのように影響しているかを、全米700のファミリービジネスを対象に行った調査があります。ファミリーの社会関係資本が高いほど事業は成功していること、人的、財的資本は事業の短期的成果をもたらす力が強いこと、そして社会的資本は、より長期的に働くということが確認されています。ファミリー内の良い人間関係や、ファミリーと社員の信頼関係は、長期にわかる会社の繁栄のために非常に重要な要素なのです。

私自身の体験ですが、父との「親子関係就業」時代や「世代交代」時代に、私は父親の人間関係を否定したくなる気持ちがありました。親の七光りと言われたくない、自分の実力で自分の人間関係を作って、周りに自分の能力を認めさせたい、と思う気持ちが強まり、祖父や父が築いた人間関係(社会関係資本)を否定してきました。しかし、親の七光りは、ファミリービジネスの社会的信用を高めている重要なファミリー資本であるという観点から見ると、自分の能力を周りに認めさせたいと焦っていた私の気持ちは、小さなエゴと呼ばざるを得ないようなものです。私はこのことに気づき、先代たちが築いた社会関係資本を感謝して受け止めるまでに長い時間をかけ過ぎてしまいました。

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