ファミリーの参加で倫理志向と業績が高まる

 

私が関わらせていただいているファミリービジネスにも、地域で尊敬を集め、そこで働くことが誇りとされる企業が多くあります。地域に対する貢献と地域の人たちを大切にする心がお目に掛かったオーナー家の方たち全員に感じられます。

 

不況の時代にもオーナー家の経営者たちの血のにじむ努力によって、ひとりの解雇者も出さずに雇用を守るというファミリーの文化が、社員の意欲を高め、献身的な働きにつながり、会社の最大の経営資源を生み出しています。

 

ファミリー性(ファミリネス)を研究した多くの学術論文の中に、倫理志向についての研究があります。(※) ファミリービジネスへの参加が高まるほど創業精神や経営理念に対する意識が高まり、その結果、競争優位性が高まり、業績が良くなるという仮説を、米国526社の中小規模のファミリービジネスを対象に検証したものです。

 

「倫理志向」については、何が倫理的でないか、といった議論まではこの調査では踏み込まず、社内で理念や価値観に関する会話の頻度がどれほどあるかを尺度としています。ファミリーのビジネスへの参加と業績の関係を、そのパイプ役として倫理志向を位置づけることで説明しようという研究です。

 

仮説1a:ファミリーのオーナーシップとコントロールのレベルが高いほど、倫理志向が高まる

仮説1b:ファミリーの多世代の参加のレベルが高いほど、倫理志向が高まる

仮説1c:ファミリーの価値観の一貫性が高いほど、倫理志向が高まる

仮説2:倫理志向が高い企業ほど業績が良い

仮説3:企業の倫理志向は、ファミリーの参加の3つの側面(コントロール、多世代、価値観の一貫性)と企業の業績との関係を仲介する

 

それぞれの仮説を検証した結果、仮説1aを除く全ての仮説が検証されました。つまり、ファミリーのビジネスへの参加度合いが高いほど、倫理志向が高まり、業績が良くなるということです。

 

Examining the Relation Between Ethical and Financial Performance in Family Firms, Ernest H. O’Bolye Jr., Mattew W. Rutherford and Jeffrey M. Pollack 2010

 

 

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