事業承継の深層にある「文化の衝突」:家父長制と個の幸せの狭間で


事業承継は、単に社長の椅子を譲るという一時的なイベントではありません。それは10年、20年という歳月をかけて取り組むべき、長期的かつ戦略的な「プロセス」です。私たちセブン・スプリングスは、経営や税務といった側面だけでなく、心理学、社会学、人類学などの多角的な視点から、ファミリービジネスが直面する構造的な課題に向き合っています。

今回のブログでは、セブン・スプリングスの7名の座談会で議論された「事業承継を阻む目に見えない壁」とその乗り越え方についてお伝えします。

1. 世代間に横たわる「価値観のギャップ」

現在の事業承継において、最も根底にある構造的課題は「世代間のギャップ」です。

  • 先代世代: 戦前の民法に近い「家父長制」や「直系家族」の価値観を無意識に引きずっており、「長男が継ぐべき」「言わなくても分かるはず」という上位下達のコミュニケーションが基本になりがちです。
  • 後継者世代: 戦後の「民主主義教育」を受け、個人の自由や平等を重視します。

この「家父長制(保守主義)」と「個の尊重(民主主義・リベラル)」の対立は、いわば「文化の衝突」のようなものです。このギャップを認識しないまま「忖度」や「暗黙の了解」に頼ることで、深刻な人間関係の不具合が生じてしまうのです。

2. 「娘しかいない」という言葉に潜む危うさ

座談会では、後継者が娘さんである場合の課題も多く語られました。経営者が無意識に発する「娘しかいない」という言葉は、娘を一人の人間としてではなく「家の存続のための道具」として扱ってしまう危険性を孕んでいます。 また、家父長制の影響で、女性が「家族の負の側面(愚痴やゴミ箱の役割)」を押し付けられたり、能力があるにもかかわらず「影のフィクサー」に甘んじたりするケースも少なくありません。次世代の誰もが、自分らしい人生と家業への貢献を両立できる仕組みづくりが急務となっています。

3. 事業承継は「10〜20年」の教育プロセス

「良い学校に入れれば、立派な後継者になる」というのは誤解かもしれません。現代の義務教育や大学教育の中に、ファミリービジネスを応援するカリキュラムはほとんど存在しないからです。

  • 家庭での教育: 自社の社会貢献や理念、財務の魅力などを、子供の発達段階に合わせて伝えていく必要があります。
  • 人格の陶冶: システム(組織図)を整えるだけでなく、それを司る一人ひとりの「人格(キャラクター)」を磨くことが不可欠です。
  • 戦略的な準備: 10年、20年をかけて、個人の個性を尊重しながら、同時に家業の重要性を伝えていく。この「二律背反」を丁寧に解きほぐす作業が必要です。

4. 第一歩は「夫婦のコミュニケーション」から

驚かれるかもしれませんが、事業承継を成功させるための最大の鍵は「夫婦(父母)の対話」にあります。 家父長制の下では、夫婦は「阿吽の呼吸」で済ませ、深い議論を避ける傾向があります。しかし、両親が本音で語り合い、一致して子供に向き合う姿勢こそが、子供にとって最も安心できる教育環境となります。

セブン・スプリングスが提供する「伴走」

家族だけで話し合うと、どうしても過去の傷つきや固定されたパターン(罵り合いやシャッターを下ろす行為)に陥りがちです。 私たちは、いわば「産婆さん」や「交通整理員」のような役割を担います。

  • ファミリーミーティングのファシリテーション: 感情的なぶつかり合い(紛争)を、良質な議論へと変えていきます。
  • 家父長制の「見える化」: 伝統の良さを活かしつつ、現代に合わない部分は手放せるよう、客観的な視点を提供します。
  • 手続的正義: 「自分の意見も聞いてもらえた」という納得感のあるプロセスを経て結論を導き出せるよう支援します。

事業承継は、家族全員が成熟し、新しい関係性を築き上げるチャンスでもあります。まずは、雑誌のコラムや共通の話題をテーマに、ご夫婦で30分だけ語り合うことから始めてみませんか? このブログをテーマに話し合うことも一案です。

私たちセブン・スプリングスは、あなたのファミリーが持つ可能性を信じ、長期にわたって伴走し続けます。


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