3円モデルの複雑さは、ファミリー企業と非ファミリー企業とを比較するとわかりやすくなります。
非ファミリー企業であれば、関係者はオーナーシップとビジネスだけで表すことができます。そこでは株価に反映される企業価値がオーナーの最大の関心事であり、経営者はその企業価値を高めることを経営の主眼とします。わが国では、会社は誰のものか、という議論がよく行われ、企業価値よりも社員の幸福を追求すべき、といった議論があります。これも、オーナーシップとビジネスの2つの要素を念頭に置いた議論という意味において、非ファミリー企業の課題です。
ところが、ファミリービジネスには第三の要素「ファミリー」が加わります。図に示すようにファミリーとビジネスは、全く異なった価値基準を持つものです。愛情で結ばれたファミリーの行動原理は、成果を追求するビジネスの行動原理とは全く相いれないものです。
図 ファミリーとビジネスの価値基準の相違
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 ファミリー  | 
 ビジネス  | 
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 感情(情動)が基本  | 
 成果(任務)が基本  | 
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 使命:心身の健康を整え、安らぎを与える、子供を有能な成人に育てる  | 
 使命:効果的な戦略に基づき収益性の高い製品、サービスを提供  | 
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 ルール:平等  | 
 ルール:能力主義  | 
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 受容:無条件  | 
 受容:客観的な成果による  | 
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 関係性:一生続く  | 
 関係性:雇用契約に基づく  | 
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 権力:上の世代が強い、生まれ順で差がある  | 
 権力:主に役職・権限と影響力に基づく  | 
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 愛情が原動力  | 
 金銭が原動力  | 
この2つの相反する行動原理が交わりあっているのがファミリービジネスです。ファミリーの存在によって、非ファミリー企業とは比べものにならない複雑さを持ち、その複雑さがファミリービジネスの強みの源泉にもなり、また弱みの源泉でもあるという、特別な構造になるのです。

	
			
			
			
			
			
			
			
			
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