ファミリービジネスアドバイジングを研究対象とするための枠組み

これまでは、ファミリービジネスに対するアドバイジングについては、断片的な研究、体験的な報告ばかりであり、学者の間では研究対象にはなっていなかった。

ご紹介する論文は、このような背景で、ファミリービジネスアドバイジングに関する過去の論文を統合し、将来的な研究の基盤となる枠組みを作ることを目的としている。

Advising the Family Firm: Reviewing the Past to Build the Future
Vanessa M. Strike
Family Business Review January 9, 2012

調査は、1980-2011のアカデミックジャーナルを、アドバイジング関連、ファミリー企業関連のキーワードで検索した結果の、論文(105)、書籍(8)、書籍の章(23)、調査報告(3)の資料を対象に行われた。
これらの資料の著者は、FBコンサルタント 63、経営学者 46、企業家論学者 22、組織論学者 16、ファミリーセラピスト 14、法律家 9 であった。

資料を基に、ファミリービジネスアドバイジングに関する研究テーマを以下のように分類。

(ア)    アドバイザーのタイプと特性
・ タイプ: フォーマルアドバイザー、インフォーマルアドバイザー、役員会(取締役会、諮問委員会)
・ 特性: 資質、能力
(イ)    アドバイザーの選定
・ ニュージーランドでの調査: 過去の経験 75%、評判 71%、個人的信頼関係 64%
(ウ)      アドバイジングプロセス
・ 介入プロセス
・ 4ステップ: 契約、評価、変革計画と実行、評価と維持
・ アドバイジングモデル:ボーエン理論、組織開発論、システム論、プロセスとシステムの連携、ファミリーセラピー など
(エ)    コンテクスト
・ 国別の背景: 宗教、島国根性(insularity)、集産主義(collectivism)
・ 組織の背景:オーナーシップの発展段階、夫婦共同経営、紛争、健康問題、事業承継、アドバイスに対する嫌厭
(オ)    成果・アウトカム
・ 企業の成果
・ ファミリーの成果

 

結論として、以下のように今後のファミリービジネスアドバイジング研究の枠組みを提案している。

(ア)    アドバイザーのタイプと特性
・ 体系的な分類
・ 内部、外部アドバイザーの違い
・ コンテンツ専門家とプロセスコンサルタント
(イ)    アドバイザーの選定
・ 選択のプロセス
・ 内部アドバイザーはどのように選ばれるか
・ なぜアドバイスを求めるのか
・ 同質のものを求めるのか、異質のものを求めるのか
(ウ)    アドバイジングプロセス
・ アドバイジングモデルの有効性の検証
・ 変化に対する理解
・ FBとアドバイザーの関係に関するモデル
・ どのようにアドバイスを採用、棄却するのか
(エ)    コンテクスト
・ 国、文化の背景がアドバイジングのプロセスに与える影響
・ アドバイザーはそれぞれの組織背景でどのような戦略を用いるか
・ アドバイザーはFBの組織背景をどのように評価するか
・ これらの組織背景はアドバイスの提供、求め、採用にどう影響するか
(オ)    成果・アウトカム
・ アドバイザーはいつ頃どの程度の成功をおさめ、ファミリービジネスに影響を与え、業績に反映させるのか
・ アドバイスが否定的な成果につながる可能性は?
・ 中間レベルと組織レベルのアウトカム
・ 中間レベル: 姿勢、コミュニケーション、バリュー、人間関係
・ 組織レベル: 戦略プランと効果的な実行、成長、イノベーション、財務的成果、永続性
(カ)    各分野を関連付ける理論の開発

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