FFI 2009 Conference レポート6 :相続対策の信託の利用 米国の課題

信託に関するセッションに参加しました。

米国では、相続に信託が使われる歴史は古いものです。
ファミリービジネスの創業者などが、委託者として会社の株などを信託化し、
弁護士などを受託者にしてその運用を任せます。
会社の配当など、そこから上がった利益は、委託者が受益者として指名する
一族のメンバーに分配されます。

この仕組みで100年以上にわたりオーナー一族の資産が守られるケースが多く、
セッションでは、米国ファミリービジネスの資産の半分以上は信託にある、とのことです。

ファミリービジネスで使われてきた、長い歴史を持つ信託ですが、
この10年で状況が変わってきたようです。

UPIA(Uniform Prudent Investor Act)という、信託に関する法律が、
ポートフォリオ理論の影響で改正され、
一社に対する集中的な投資は、利益を最大化するという受託者の責務を
果たさないものとして、規制されることになりました。

この10年でほとんどの州の州法がこれに合わせて改定されてきました。

そうでなくても受託者を務める弁護士達は、受益者の創業一族から
運用益の改善を求めて訴えを起こされるケースが多く、
そこに前述の法改正による裁判所からの圧力も加わり、
受託者は難しい局面に立たされています。

委託者の本来の目的は、会社の株の分散を防ぎ、
一族の子孫達に配当の恩恵を受けさせたい、という事であったはずですが、
法廷はそのような目的は考慮せず、投資効率だけを尺度にして判定を下すのです。

発表したGenSpringというファミリーオフィス運営会社の信託担当者は、
法の見直しを求めると共に、受益者のファミリービジネスを守り、育てる人
としての認識を訴えていました。

セッションの後、隣に座っていた信託を扱う弁護士は、
「信託を利用した相続対策は、オールマイティーではない」、
と語ってくれました。

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